THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
の死に神の姿以外に、女性のまわりにあるものなど、なに一つなかったからである。詩人は、いったい、絵のどこを見つめていたのであろうか? 絵のなかのどこを? どこを? いや、なにを? であろうか?
その本のタイトルは、『いまひとたびの生』というもので、詩人が高校生のときに夢中になって読んでいたSF小説のうちの一冊であった。作者のロバート・シルヴァーバーグは、ひじょうに多作な作家ではあるが、生前の詩人の言葉によると、翻訳された作品は、どれも質が高く、つまらない作品は一つもなかったという。ところで、『いまひとたびの生』という作品は、未来の地球が舞台で、そこでは、人間の人格や記憶を、他の人間の脳の内部で
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