THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
つの太陽となるのだ。あの便所の光や、ぼくのタバコの先の火の色や、川面に反射した、川沿いの家々の軒明かりや、窓々から漏れ出る電灯の光が集まって、一つの太陽となるのだ。しかし、それは別の話。人間のことはすべて知っているのに、ぼくのことだけは知らない水鳥たちが、川の水を曲げている。ぼくのなかに曲がった水が満ちていく。夜はさまざまなものをつくりだす。もともと、すべてのものが夜からつくられたものだった。
事物から事物へと目を移すたびに、魂は事物の持つ特性に彩られる。事物自体も他の事物の特性に彩られながら、ぼくの魂のなかに永遠に存在しようとして侵入してくる。一人の人間、一つの事物、一つの出来事、一つの言葉
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