THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
言葉そのものが、一つの深淵である。そして、ぼくの承認を待つまでもなく、それらの人間や事物たちは、やすやすと、ぼくの魂のなかに侵入し、ぼくの魂のなかで、たしかな存在となる。ときどき、それらの存在こそがたしかなもので、自分などどこにも存在していないのではないか、などと思ってしまう。薬のせいだろうか。いや、違う。ぼくが錯乱しているのではない。現実の方が錯乱しているのだ。どうやら、ぼくの思いつくことや、思い描いたりすることが、詩人の書いた詩やメモに、かなり影響されてきたようだ。詩人がこの世界から姿を消す前に、ぼくの名前で発表させていたいくつもの詩が、ぼくを縛りつけている。詩人と会ってしばらくしてからのこと
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