THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
たことがあって、それを詩人に話したら、詩人がウミガメをモチーフにしたものをいくつか書いたのであった。河川敷に敷かれた丸い石の影が、砂利道の上にポコポコと浮かび出た無数の丸い石の影が、ぼくにウミガメの子どもたちの姿を思い起こさせたのだろう。そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に、詩人がいつも坐っていたベンチのところに辿り着いた。ベンチは、少し離れたところに、もう一つあったのだが、そちらのベンチの方には、だれも坐らなかった。坐った瞬間、ひとが消えるという話だった。じっさい、何人か試してみて、すっと消え去るのを目撃されているのだという。川辺の風景が、流れる川の水の上に映っている。流れる川の水
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