人間/岡部淳太郎
 
れて
自らの脚で
立つことを覚える

暗い
都市の夜の下で
人間は横暴と忘恩を繰り返し
発明し
発見し
(その裏で すべるものは笑い)
論文を発表し
論文を批評し
(その裏で すべるものは笑い)
人間は昔あった出来事を遠くに忘れて
夜が
なお勢力を拡大しつつあることも忘れて
自らの手による
想像で汚れる

暗い
内面の夜の中に
特別な人間は現われては消えてゆく
熱い
証明の期待に揺れて
寒い
事実の個体に裏切られて
人間は悪い比喩を飲みくだす
すべるもののひそやかな輪舞に気づかずに
息苦しい喧騒の中で静かに
自らを殺す
物語は語られ

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