人間/岡部淳太郎
 

彼等はそれぞれに
恩寵を知る

暗い
宇宙の夜の中に
最後の人間は斃(たお)れる
途端に 宇宙の空は晴れ渡り
すべるものに似た哄笑が
星々の間に谺する
人間であることに恐怖を抱き
人間でないものへの恐怖に顫えた
短い期間
恐怖によって彩られた歴史を
すべるものに明け渡して
人間の時間は終る
彼等はそれぞれに
静寂を知る



連作「夜、幽霊がすべっていった……」

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