ずっと好きでいられますよう/由比良 倖
 
女が、気に入った布やリボン、きれいなボタンなどを捨てられずに手近にある裁縫箱に詰め込むように、私は夢の印象や記憶、細々とした発見などをこの日記帳に無造作に溜め込んでいたらしい。
 幼少時の宝物というのは長じて開けてみると、懐かしくはあっても格別光らない石だったり、色のあせた蝶の羽だったりすることが多いけれど、始末屋の女性の裁縫箱には、おびただしい糸屑のなかにまだ使えそうなものが存外残っていると、ひとりでほくそえむことも多いのである」

 と、その通りだなあと思う。今の僕のノートには荒削りな、磨かれる前の言葉や、もうほんの少しで花開く言葉に満ちている。ノートには風のように舞い込むイメージを、が
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