ずっと好きでいられますよう/由比良 倖
 
のじゃない。その人といい加減長く付き合って、その人独特の個性や魅力を知ることが「物のあわれ」だと思う。

 仮に本当に「誰もが絶対に幸せになれる方法」というものがあったとして、それをすっぽり当て嵌めていけば誰もが幸せになれるほど、人間は単純ではない。ひとりひとりが、ただ不幸ではないというだけの、消極的な幸せを得るのではなく、個人的に、主体的に世界を好きになるのでなければ、幸せという言葉は、無感覚とか不感症だとか、不幸な自分の忘却だとか、一面的な多幸感だとか、つまりはただの個人性の喪失という意味でしかなくなる。

 人はいろんなものに惹かれる。惹かれるから生きられるんだ。幸せは、ひとりひとり
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