数式の庭。原型その1/田中宏輔
 


それは
たちまち
指差されたものそのものとなり
見られたものそのものとなり
かがれた香りそのものとなり
聞かれた音そのものとなり
口にされた言葉そのものとなる。

あらゆるものが比である。

指が
いくつかの
大きさの異なる
数式の輪郭をなぞる。

指は
太陽の輪郭をなぞり
庭に咲く
数式の花の輪郭をなぞる。


*


むかしからよく見かける
数式の花も
見慣れたものだが
うつくしい。

新しく見慣れない数式の花が咲いていて
すこし奇妙な感じがするのだが
それはまだ見慣れていな
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