数式の庭。原型その1/田中宏輔
いないためだろう
十分にうつくしい。
そして
それ自身は
それほどうつくしくはないのだけれど
こんな数式の花も咲いている。
それ自身のうつくしさは
取るに足らないようなものなのだが
それが咲いているために
ほかの数式の花が
ことのほか、うつくしく見えるのだ。
その花の貧しいうつくしさによって
うつくしさの貧しさによって
他の花の豊かなうつくしさに
うつくしさの豊かさに気づかされるのだ。
しかし、そういった花に
貧しいという言葉を与えたのは
間違いだったかもしれない。
ときには、間違いも
またうつくしいものだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)