数式の庭。原型その1/田中宏輔
のだけれど。
わたしの数式の庭では
すべての花が咲き匂っている。
わたしは、わたしのちっぽけな存在を
その花のなかにおいて、しばらく眺めていた。
*
花もまた、花に見とれている。
*
数式の庭が、わたしを呼吸する。
わたしもまた、数式の庭を呼吸する。
数式の庭が、わたしを吐き出し、わたしを吸い込む。
わたしが、数式の庭を吐き出し、数式の庭を吸い込む。
数式の庭が明滅するたびに、わたしの存在が明滅する。
わたしの存在が明滅するたびに、数式の庭が明滅する。
この数式の庭が存在するので、わたしが存在する。
もしも、こ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)