数式の庭。─前篇─/田中宏輔
 
曲げ
雲をまっすぐに伸ばしてばらまいた。
直線状の複数の雲に数式の庭が変換され
わたしの視線も複数の視線に変換され
数と記号が無作為に並べられた状況を
縦から横から斜めから上から下から
しばらくのあいだ眺めていた。

 *

庭に出ようとした瞬間から
精神のなかに
数や記号があふれ出てくるのが感じられる。
数や記号が働きだそうとするのを感じる。
数式の庭に足を踏み入れたとたん
わたしの目と肉体は
内からの数や記号の圧力と
外からの数や記号の圧力にさらされて
まるで両手でピタッと挟まれた隙間のようだ。
限りなく薄い空気の膜のようなも
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