誰かの為に鳴らされる音はすべて歪んでいる/ホロウ・シカエルボク
 
ただ、人生の選択は、椅子を選ぶほど簡単じゃないってだけのことなんだ、少し離れた大橋の上で誰かが歌っているらしい、二十年前のヒットソングだ、誰に向けて歌っているんだ、誰に聴いて欲しいんだ?こんな真夜中の大橋の上、観客は三十分に一度通り過ぎればいいくらいさ、ストリートミュージシャンは好きじゃない、彼らのほとんどは夜に飲み込まれて、帰れない者みたいになってしまう、彼らと詩人との間にどれくらいの違いがあるのかは知らないけどね、なんだっていいさ、どっちだってなんだって、どんな結論だって個人差を排除した上でのものさ、A君にとっちゃ当たりでも、B君にとっちゃ外れかもしれない、一般的なイメージの話は個人を越えるこ
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