なにかが寝床にやって来る/ホロウ・シカエルボク
 
なかった、背中には羽を隠しているように見えたが飛び上がることはなかった、尺骨のあたりに痛みが走り始めた、左手を添えてもっと早く殴った、どれだけの時間を費やしたのか、甲虫はすべて叩き潰されて散らばっていた、俺は肩で息をしていた、もう腕が上がらなかった、壁にもたれて座った、一度目を閉じて深く呼吸をし、目を開けると甲虫たちの姿はもう無かった、ボロボロになった寝床があるだけだった、俺は困惑して四つん這いになった、嘘だ、確かに覚えている、甲虫が乾いた音を立てて潰れる時のあの感触を、音を、そうして四つん這いになった自分はいま、甲虫のように見えているだろうと思う、誰かが俺を叩き潰そうとするだろうか?それを叩き潰
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