風が俺を撫でようとするときに友達と居てしまっては/ホロウ・シカエルボク
この一角にあった小さな店先で、朗読会をしたことがあった、店の中でやるのかと思ったら表通りに椅子が並べてあってさ、マジかよって思いながら何篇か読んだよ、マイクを使っていたから、近所の店はさぞかし煩かったろうな、そう言えばもう十年くらい朗読会をしていないな、変な流行風邪とかあったからね、よくやらせてもらった店はみんな潰れちまったし…まあそんな話はいいや、路地を抜けてアーケードに戻る、とはいえ、目ぼしい店はもうみんな覗いてしまった、あとは来た道をなぞって帰るだけさ、まあ、たまには喫茶店に入って珈琲を飲むこともあるけどね、嫌な街だよ、酒を飲む店は山ほどあるのに、珈琲が飲める店なんて夜はまず開いてないんだ、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)