レコードの溝の数/ホロウ・シカエルボク
 
水門は開き切らない、折角流れ出そうとしている水の勢いを殺してしまう結果になる、書くということは詰まるところ、自分自身の根源が刻まれたレコードを制作するということだ、そこに俺の意志がある、人生があるんだ、俺自身の軌跡がそこに残されていなければ、俺は自分のことを亡霊のように思うかもしれない、何も知らぬまま死んで、成仏すら出来ない哀れな亡霊だとね、何も知ろうとせずに書き続けるということは、見知らぬ森に何の装備もなく入り込んでいくことに似ている、位置も方角も分からぬまま、彷徨い続けることに似ている、でもそれは逆に言えば、どこに向かって歩いても構わないということでもあるのだ、迷い尽くして出口を見つけた時の喜
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