Pastiche。/田中宏輔
ぐるまわして自分自身を眺めることができる。
? しかし、鳥はいっかな姿を現わそうとはしなかった。
? 聞こえるのは、鳥籠の心臓の鼓動ばかりだった。
? 鳥籠は鳥籠のなかを、ぐるぐるともっと強烈に探し廻る。
? 突然、鳥籠のなかに無限の青空が見えてくる。
? 鳥が見える。そして、鳥しか見えない。
? 鳥籠はどこにいるのか。
? 鳥籠の鳥は、実は鳥籠自身だった。
? 鳥は籠のない鳥籠である。
Opus Tertium
吊り下(さ)げられた容積のない鳥籠
(高橋新吉『十姉妹』)
? 鳥籠は、ひたすら鳥の表象として、鳥に向かい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)