臨終のメモ/由比良 倖
っ手がない、
(僕が言わないと誰も言わない、疑似餌は針を捨てて、
今は空を泳ぐのを楽しんでいる、太陽を照り返して黄色い、
あらゆる爆発が人類の頭上の光の総量を示し続けている)、
僕に染色体があるなんて恐らく嘘だ、色に染まってなどいないのに。
カードリーダーを舌に押し付け合う、
舌同士を少し触れ合わせるために、
溶けかかった欺きたがりの舌の根を、
皆一斉に切り離して、夜の真ん中へ、お互いの性別名前を
夜空の遠くへ投げつけて僕たちは
お互いへ少しずつ、衣服に火を放ち合う、
真っ先に他殺体で発見されるような肌の色、
花火が全て散った後、量子のオルゴールを回さなけれ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)