臨終のメモ/由比良 倖
 
背中には泳ぐための羽がある、
なのに僕は沈み続けて
空間はざらざらしていて、僕に反発している、
骨と骨との間には、粘膜があり、空に手を翳すと、
手の裏側が熱くなり、簡単に皮が剥がれていく

感情は僕の背中を、その手で撫でていく、空を飛ぶ魚のための電波塔が星中を繋いでいく、リズムを刻みながらお絵描きをする、国中の人間達は楽器の手入れに習熟する、地球の等高線上に、雲はオルゴールのよう、未明の眠りは、捩れて緊張の解けたカセットテープのように、雨は朝を揺り起こし、雨は僕におはようと言う、僕はどこか遠くに、落下する墨色の光、
十六等分する、身体を、眉のすぐ下あたりから、
光は光に重なっていき
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