遍在した/由比良 倖
ねえ、タールに染まった壁紙を剥ぎ取ったら私の中の縺れ合った、赤色の声がこの世界を浸食していくかな、それはとても儚い反響で構わない、私の(泳ぎ)に空間はいらない、ただ、繋がっていく中で、私が不在していく中で、彼とあなたと彼らと、色のない生物たちの間で、私は彼らに気付かれぬ程度に笑いたい、彼らに気付かれぬ間に、私は遍在したい。
どこからともなく量産されたハローが、遍在することによって、小さくなっていくのを悲しめない無感情ばかりだから、増長した誇大妄想の沈黙が欲しいよ、共に秘かな、冷たい触れ合いを小さなベッドの中で出来ますか、それはいつの時代ですか、昔からめんめん受け継がれた来た、皮膚感覚の
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