遍在した/由比良 倖
 
覚のために、私は濫費される言葉のために、表皮が剥がれて行く、私にはベッドに横たえる身体がないから、限りなく私がここにいない私の理由をあなたは重症扱いしてくれますか?

重い沈黙のギプスを全身に優しく纏わせて、あなたのベッドの上で私はサナギになりたい、羽化したい、羽化したい、羽化したい、
それは、ずっと、ずっと後の話です、私に重い時間を、沈黙をください、
文字盤の鳴る、古い時計を傍らに置けば、私は目を瞑れるかも知れません、
そしたら頭の中の海では、懐かしい白い花が、暗い波に揺れるので、私は幼年時代以来の寝返りをうてるのかも知れません。
あなたは、その間……、
沈黙をよろしくお願いします、私から放たれる日本語を、放してやって下さい、
目を瞑ると、あなたの上には拡がる、宇宙の塵を、集めててください……。
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