水分をかんじない/パンジーの切先(ハツ)
無音のまま佇んでいる母は、神様じみている。
犬は遠くにじぶんだけの骨を探しにいって、
(大抵は)、ぜつぼうして、もどってくる、
とうめいな犬たちにも、餌は必要だと、
母は子どもたちの弾いてきた数々の楽譜の、
いちばんやわらかくて、おいしいところを差し出す。
犬たちは沈黙しながら、母の手を舐める、
だが、犬の舌は、水分を含んでいない、
弾かれなくなった楽譜というのは、ひどく乾いている、
ときどき、墓のパンフが庭に散乱している、
(どちらの)、(誰の)、(どこにある)、墓に、
(誰と)、入ろうかとかんがえるとき、
両手足のゆびゆびが、
みぎはひだりと、ひだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)