水分をかんじない/パンジーの切先(ハツ)
 
ひだりはみぎと、
交差して、硬く結ばれて、
必然的に私は、うずくまる、ことになる、

母は乾燥していて、パンフをめくることができない、
乾燥を知らない場所でやすらぐ父には、パンフは届かない、
私だけがほどかれた指でパンフをめくり、じぶんだけの骨を入れる器のようなものを、無意識に探し始める、

夜中に目を覚まして、股が不自然に濡れている気がして下着に手を入れると、
ゆびさきにうっすら赤い液体がつく。

ティッシュでゆびをぬぐった後、
やはり気になって、
手を洗おうと脱衣所の戸の前に立てば、
母はもう明日の準備を始めている、

少し開いた引き戸から見えるその姿は、やはり、神様じみていて、その戸を完全に開くのが、ためらわれる。
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