四千七百四十五日/ただのみきや
死ぬこと
一つ目の方法のために男は神のもとへ行った
神は完全な光であったから
だがその光に完全に没入するためには
男には信仰があと少し足りなかった
二つ目の方法のために男は悪魔のもとへ走った
悪魔の住む暗闇が一番濃いに違いないと思えたから
だが悪魔も時折こころを奪われて
眼を細めてひっそり暗がりから光を愛でることもあり
結局はだめだった
三つ目の方法のために 男は今 遺書をしたためている
男の書いている遺書自体すでに深い樹海になっていて
うっかり読んだものは二度と戻っては来れないだろう
すると突然紅葉でもしたかのように
文字のひとつが真っ赤に染まった気がしたのだ
それ
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