詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
を見つめたまま男は応えた。
「アメリカ人なの?」
「ああ、いまはね。」
「アメリカ人ってふしぎよね。いつも国籍が曖昧なんだから。」
「なるほど、そうかもしれないな。あんたはここか?」
「そうよ。」
「見えないな。」
「かもね……あたし、むかしはアメリカ人だったの。」
「なんだ、俺と似たようなもんじゃないか。」
「アメリカって都合のいい国なのよ。ね、あなたもそう思わない?」
「そうだな……俺みたいな男にはね。」
「あたしは捨てちゃったけど、あなたは拾ったのね。」
「いや、拾われたんだよ。競馬場の外れ馬券みたいにさ……。」
「それって、どういう意味なの。」
「見た目はゴミだ
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