詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
つ女

 青い瞳の女だった。
 粗いモルタルと、煉瓦づくりの壁を刳りぬいた窓の、暗緑色のペンキを塗りたくった鎧戸は、わずかな隙間を残して閉ざしてあった。うす暗い部屋のベッドに腰を落として男は、汗臭いシャツと白いパナマ帽を脱いだ。港の荷役夫みたいな、右肩下がりのごつい肩から臍の下まで、曲のある黒い体毛が繁茂していたが、うすい頭髪と顎髭はほとんどが白髪だった。
 暑くないか?……と男がいうと、傍らに立つ女はちいさな扇風機を回した。
「ごめんね、あかるいのはいやなの。」
 窓辺のベッドで、男と女は、汗にまみれて埋め合わせをする。
鎧戸から漏れたわずかな白熱のひかりが、女の顔に当るたび、うっ
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