詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
散文の海へね。」
「散文の海へ? 雨になって……?」
おーん。
「じゃあ、俺、帰るからね……。」
おーん。
おーん。
「あ、あ……ねえ、ちょっと待って次郎さん、ね、ね、ちょっと待ってよ。」
おーん。
おーん……。
 次郎さんが消えると、散文のような雨も止んだ。

 窓の外は空が壊れたような乱暴な日差しが降りそそぎ、海は見渡すかぎり白い波頭が立つ群青の海へと変化した。いつかどこかで見た気がする偏西風の吹き荒れる海だった。
 あ、そうか。ここは「かめりあ丸」の船室なのだ、と。気付いたわたしは、ガリレオ式望遠鏡を手にして、次郎さんのいる三宅島を探すのだが、水平線にはそれらしき島影
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