詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
じめた。
 あ、流星雨だ……。
おーん。
おーん。
 泣き叫ぶような、くぐもった声が聴こえた。
 えっ、だれかいるの? だれ?
「次郎さん? ね、次郎さんでしょ?」
おーん。
「ちがうよ、俺じゃない。あれはさ、雨の叫び声だよ。」
「え? 雨の叫び声って……なにそれ?」
{つまりさ、雨は生まれたばかりの詩人のいのちだよ。だからさ、あの叫び声は、雨が描く散文ってことだよな。」
「え、うそっ? 散文なの?」
「そう、俺たちはさあ、みんなあんな風にして生れ落ちたんだよ。」
「俺たちって……? だれ?」
「だからさ、詩人だよ。砂粒みたいな雨になって生れ落ちたんだよ。とおい昔、散文
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