詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
妨げられたわたしは、イルカやクジラの脳みそのように、半球ずつ眠ることを覚えてしまうのだ。それは雨の日と晴れの日を数えるようなものだから、わたしは雨の音を聴きながら、半分しかない夢のなかへと落ちて行くのだった。

 夢のなかにはおおきな窓があった。
 窓の外には海が見えた。
 水平線の煙る視界のわるい海だった。砂粒のような硬い雨が海面を叩く音が聴こえた。窓のある部屋には白いペンキを幾度も塗り重ねたような壁があって、飾り気のない二等船室のような気分だった。たぶんここは船室なのだとおもった。だだっ広い部屋の床は硬く、部屋の隅にはフライシートの付いたドーム型の黄色いテント。その横に黒い長靴が一足。
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