詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
うすく閉じて女は、右手を添えた接眼レンズを右眼に当てた。すると、海のなかを覗くような青い視野のなかに、女を抱いた男たちの未来が見えるのだった。
一年後、男はカイロで客死する。
散文の海へ10
ひとは今日という日を見ることができない。
今日という日はあしたにならないと見ることができないのだ。つまり、今日という日が過去になれば、ふり返って見ることができるということだが、そうなると見ることのできない今日という日は未来なのだといってもかまわないだろう。それで、今日という未来を生きるのであれば、ひとは観念的に生きるしかないということになる。記憶のなかの日々を辿れば、たしかに
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