詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
おいおい、ここはカリブの海だろ。そんなの見える訳ないじゃないか。」
 女はよくうごく左眼をつむってウィンクすると、悪戯っぽい笑みを男に返した。
「海の向こうはアフリカよ。それでね、ここは地中海の島なの。ね、あなたはいつかアフリカで死ぬの。だから、行っちゃだめよ。地中海も、アフリカも。」
 男はあたらしい葉巻の吸い口を噛み切って苦笑した。
「あんたさ、俺はどこで死んでもいいけど、ほんとにアフリカなのか? ちょっと、いやな気分だな。」
「どうして?」
「死んだら、すぐに腐るからさ。」
 じゃあ、もういちどたしかめてみるわね……。
 右手で支えていた望遠鏡を左手に持ち替えると、左眼をうす
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