詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
生は成るようにしか成らないってことだよ。俺の未来も、あんたの未来も、見ることはできないんだから。」
「ん、そうかしら……。」
「それでさ、その男、どうした?」
「行っちゃったわ。雨の日にね。」
「雨の日か……あんたやっぱし猫だな。じゃあさ、また逢いに来てもいいか?」
「だれに?」
「あんたにだよ。」
 いいわよ……。
 感情を押し殺したような、気のない返事を男に返して、女はふたたび望遠鏡を海に向けた。
 錆びたひかりと青い闇が混濁した海だった。
 まるで眼を閉ざした砂漠みたいだと男はおもった。
「なにが見える? キューバか?」
「ううん、アフリカよ。」
「アフリカ? おい
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