詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
「ううん、いやじゃないわよ……でも、あたし雨の日は苦手なの。」
「雨の日?」
「そうよ、旅したらどうしても雨に濡れるじゃない。あたし、雨の日は外に出たくないの。」
「あんた、上手いな。」
「なにが?」
「断り方がさ。旅に誘われたのは俺がはじめてじゃないだろ?」
「ないわよ。だって、誘われたからここに来たの……雨は降らないからって。幸せにするからって……みんな嘘だったけどね。あたし、騙されやすいの。」
「それはさ、仕方ないよ。」
「あら、どうして?」
「あしたの天気なんてだれもわからないだろ。人間はさ、観念的に生きるしかないんだよ。」
「カンネンテキ? なにそれ。」
「人生は
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