詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
しはどう見たって娼婦よ。詩人じゃないわ。ね、あなたは? お仕事あるの?」
「あるよ。小説家さ。ノンフィクションだけどね。」
「なあに? ノンフィクションって?」
「目のまえの現実を見たままに書いた小説……つまり、嘘は書かないってことさ。」
「あ、それならわかる。あたしも嘘はつかないもの。」
「じゃあ、ひとつ聴いてもいいかな?」
「いいわよ。」
「あんたの右眼……どうしたんだ?」
「やっぱしね。そうだとおもったわ。」
 あたしの右眼はブルーサファイアよ……。
 生まれてすぐに右眼を失くして、死ぬことばかり考えていた思春期に、宝石商をしていた父親が手を尽くして、左眼とおなじ色をした
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