詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
あるし、ワインもあるわよ。」
「水はあるのか?」
「ふたり分ならね。」
じゃあ、とりあえずワインにしよう……と男はいって、つづきは海に日が沈んでからでいい……と、付け足した。
山羊の乳を塗り込めたような無骨な木のテーブルに、葉巻を持つ手で片肘をついて男はワインを呑んだ。あいかわらず、ちいさな扇風機は回りつづけている。
「もういらないんじゃないか? それ……。」
「どうして、暑くないの? あたしね、好きなの、これ。」
ちいさな扇風機の首を振るたびに聴こえるあまい音が、猫の嗤い声みたいで好きなんだと女はいう。
「猫の嗤い声? あんた、詩人だなあ。」
「そうかしら……あたしは
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