詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
塵みは顔のない捨てられた塵みだけ。玄関に置いてある塵みは拾わない。
上田さんは「ややこしいゴミ」はそのままにしといて……というが、わたしの気分は「ややこしい」ではなく「うっとおしい」だった。
ところが、八月は砂粒のような硬い雨に叩かれた。
朝の晴れ間に出勤しても、午后は詰め所で雨宿りの日もあったし、一週間あまりしごとに行けないほどに雨は降りつづいた。
「こんなお天気なんで、きょうもおやすみにします。」
朝六時すぎに上田さんから電話があると、わたしはつい笑って歯磨きして、寝室にもどってまた寝てしまうけれど。夢の入口には、雨に濡れたちいさな塵みの山がいくつも溜まるばかりで、安眠を妨げ
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