詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その2。/たま
 
風をうけて自転車を漕ぐ前傾姿勢は、まるで競輪選手みたいで、見ていて気の毒なほどだったが、そんな中川さんをわたしは追い越せなかった。追い越せない理由はいたって物理的で、中川さんのママチャリには三段変速機がついていたからだ。でもそれはわたしのいいわけになる。日課にしていた犬のさんぽはもう半年まえの話しだったから、マジで足腰の筋力が落ちていたのだ。
 夏休みにはまだはやいというのに駐車場はほぼ満車で、それもほとんどが他府県のナンバーをつけた車だったから、休日はもちろんのこと、平日であっても交通渋滞のほとんどない街に住むわたしには、なぜか理不尽で受け入れがたい光景だった。
 べつに出稼ぎしているわけで
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