詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その2。/たま
 
おとなではないかとおもうこともある。老いるということは、そのおとなからどんどん遠ざかることなのだとおもえば、なにもかも辻褄が合うような気がするからだ。

 ひとの一生は右肩上がりではなくへの字型の右肩下がりなのだ。その頂点は生後十年あまりでやってくると考えられる。への字型の頂点には視力があるはずで、目の成長が止まるころが頂点だと考えると、生まれたばかりの生きものはほとんど目が見えないから、ひとや犬や猫のその成長ぶりをおもえば、生きものの一生はほとんどみな等しいことになる。
 生まれたばかりのひとや犬や猫の赤子は目が見えない。そんなことは当たり前だからわたしたちは気付かないけれど、目が見えない
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