Sat In Your Lap。II/田中宏輔
あらましかば、映らざらまし。
虚(こ)空(くう)よく物を容(い)る。我等が心に念々のほしきままに来(きた)り浮ぶも、心といふもののなきにやあらん。心にぬしあらましかば、胸のうちに、そこばくのことは入(い)り来(きた)らざらまし。
(第二百三十五段)
主人がいる家には、無関係な人が心まかせに入り込むことはない。主人がいない所には、行きずりの人がむやみに立ち入り、狐(きつね)やふくろうのような物も、人の気配に妨げられないので、わが物顔で入って住み、木の霊などという、奇怪な形の物も出現するものである。
また、鏡には色や形がないので、あらゆる
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