Sat In Your Lap。II/田中宏輔
言葉を思い出させるものであった。あとのものは、『徒然草』の第二百三十五段からのもので、それにある「鏡には色・形(かたち)なきゆゑに、よろづの影(かげ)来(きた)りて映(うつ)る。鏡に色・形あらましかば、映らざらまし。」とか「虚(こ)空(くう)よく物を容(い)る。我等が心に念々のほしきままに来(きた)り浮ぶも、心といふもののなきにやあらん。心にぬしあらましかば、胸のうちに、そこばくのことは入(い)り来(きた)らざらまし。」といった言葉は、「多層的に積み重なっている個々の二層ベン図、それぞれにある空集合部分が、じつは、ただ一つの空集合であって、その
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)