綺麗な声/秋葉竹
いまとなっては
すこし悲しいくらいの
干からびた笑い話だが
僕は
じつは
二十歳になるまでに
死にたかったから
世界をバカにするのも当然だと
信じていた
どんなあたたかな抱擁もない
寒くて凍えるひとたちとの関わりの中で
拗ねた目をして
すべてのひとの視線を
避けずに逃げずに真っ正面から
受けつづけていたのは
じつは
二十歳になるまでに
死にたかったからだった
ただそれが
とても綺麗な空気を吸い込むみたいな
心を蘇らせる魔法なのだと知っていた
のは
ちょいズルかな
とはいまとなっては深く想う
生きていて
嫌なことのないいちにち
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