綺麗な声/秋葉竹
 
にちなんて無い
それでもやっぱり
たまに感じる幸せなんかに
すっかり騙されてしまうバカみたいに

周囲四面が真っ暗な空気の壁だと
感じられたとき
さらに上下にも真っ暗な壁を
感じてしまったとき
僕はその立方体から
逃れるすべのひとつも知らずに

身につけた自尊心が邪魔をして
その絶望に泣き喚くことさえできない
ほんとうは叫びたいのに

できることと云えばただ

二十歳になるまでに
死にたかった想い出だけ胸に抱いて

うん、うん、と

よく頑張ったよ君は、と
ひとりじぶん自身を慰めるやさしい
見苦しさ、だから死にたかった
死にたかったと
いまとなってはそんな嘘ばっかり
振り絞り、搾り切るような濁声で述べて
しまっているだけだ

あるいは、涙声で、か








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