詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
。つい手が止まってしまうから分別はいつまでも終わらない。

 そんなふうにして、夢の入口でしょぼくれるわたしのすがたは、老いることを拒もうとする姑息なすがただといえるが、老いることを拒むのは、あくまでもこのわたしの意識からこぼれ落ちる塵みであって、見ることもさわることもできないが、仮に日常的な名を与えるとすれば、それは約束という名の塵みだろうか。
 たとえばあした死ぬかもしれないという約束は、けっして軽いものではないけれど、かといってまともに対峙することもできず。眠らなかったらあした死ぬこともないのに。とか。老いることもないのに。とか。ついそんなふうにはぐらかして朝までばかやろうな夜と格闘し
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