詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
所をなくした淫らな不織布の白いマスク。わがもの顔のシガレットの吸い殻。わすれものかもしれないビーチサンダルや、水中メガネ。なにを掴んだのかそれが気になる使い捨てのポリエチレン手袋。大人が捨てた花火の燃え殻一セット。口を固く閉ざして中身を語らない空き瓶。つい見逃してしまうお洒落なストローも例外なくりっぱな塵みになるし、赤や青のカラフルな輪ゴムもまたおなじだ。
分別すればきりがないからとひとまとめにかき集めて。ちいさな山になったものを眠れないからといってまた分別しはじめると。まだ生きているかもしれない海月は燃える塵みなのだろうか。とか。藻屑からこぼれ落ちたゴキブリはどこから来たのだろうか。とか。つ
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