詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
ベースキャンプと稜線をなんども往復するようなもので。週三日とはいえ、いつまでも朝焼けの街に順応しないのは、わたしの体質なのか、それともただの怠け者なのかよくわからないが。いちおう年金暮らしができる程度はひと並みにはたらいたのだから、ほかにも理由があるはずで、順応できない理由のひとつに、老化現象を加えてみれば、なんとなく納得できるが。そうなると、このわたしはたしかに老いることには順応しているということになるだろうか。
 職場まではマイカー通勤だった。渋滞する長い橋を渉って中心市街地を抜けて。ものしずかな干潟が見える松並木の道を行くと、区画整理された広々とした職場の駐車場にたどり着くが。水平線の見え
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