詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
けて。一服して。用を足して。坐薬を詰めて。歯磨きして。洗顔して。肩までのびた髪を結って。瞼と目尻にマンダムのフェイスクリームを入念に塗って。それで朝の支度はたっぷり一時間半かかるから、すこし急いで。買い物用のマイバッグにタオルや、スマホや、財布代わりの小物入れや、メロンパンやら投げ込んで。今日の約束をかぞえながら職場にたどり着くわずかな時間にも、今夜かならず投げ捨てなければいけない塵みはまぎれこんでくる。たとえば、今朝の気温は摂氏七度だという。
もう十一月だった。
日の出まえに目覚ましが鳴る季節まではたらくなんておもいもしなかったから、朝の通勤路はアルペンクライマーが高所順応のために、ベー
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