詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
草に火をつけて仰向けに寝ころんで
いしいひさいちの漫画を読んだ
しばらくは、ふたりがめくる頁のかすれた音だけが聴こえた

ねぇ、だれかとしたでしょう……?

触れてもいない踊り子の匂いを嗅ぎつけたのだろうか
恋人はぼくの腹に顔をうずめてブリーフをひきずりおろすと
半立ちの根っこを口いっぱいにほおばって舌をからめた
いつも見飽きることのないその横顔は
たしかにきれいだったけれど

ひとみの奥にやきついた
あれは
もっと、きれいだった気がした

いくつもの夜をわたって
ひとひとりいない朝の盛り場を
昼下がりの月のような顔ですり抜けて
踊り子はどこまで旅しただろうか
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