もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
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己れを識ることを學ぶための最善の方法は、他人を理解しようと努めることである。
(ジイド『ジイドの日記』第五巻・一九二二年二月十日、心情嘉章訳)
「第一の格言」と、リュシアンは思った。「自分の中を見つめないこと。それ以上、危険な誤ちはないから」。真のリュシアンというものは──それを今、彼は知っているのだが──他人の眼の中に求めるべきなのだ。
(サルトル『一指導者の幼年時代』中村真一郎訳、読点加筆)
もちろん、「他人の心のなかを知ることなんて、絶対にできない」(スーザン・マイノット『庭園の白鳥』森田義信訳)ということを知ったうえで、他人が自分のことをどう思っているのか、考え
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