もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
ろの者である。
(サルトル『存在と無』第三部・第一章・?、松浪信三郎訳)
仮に、他者と私とのあいだに相違というものがまったくなかったとしたら、他者と私とは等しい存在であるといえよう。しかし、細胞の個数や、その状態といったところまで同じ条件をもつ複数の肉体など存在しない。一個の肉体でさえ、時々刻々と、細胞の個数や、その状態は変化しているのである。一個の肉体でさえ、厳密な意味では、自己同一性を保つことなどあり得ないのである。それゆえ、ジュネとランボーの言葉を、そのまま字句どおりに受け取ることは誤りであろう。強調表現の一種と見なせばよい。すなわち、「誰もが私である。」は「誰もが私に似ているとこ
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