もうすぐ百の猿になる。/田中宏輔
 
なかにわたしを見、わたしのなかにすべてを見る」(宇野 惇訳)といった能力のあるひとならば、たとえ、相手がだれであっても、「崇高なる法悦」や「神秘な精神の合一」に達することなど珍しいことでなんでもないのだろうけれど。


 胸の想いをのべるためにじぶんの舌をつかっていると、ぼくは気づく、ぼくの唇がうごいていることに、そして話しているのはぼく自身だということに。
(ロートレアモン『マルドロールの歌』第四の歌、栗田 勇訳)

 彼はことばをきる。自分の口を借りて、まるで見知らない声がでてきていることに気づいたからだ。
(サルトル『奇妙な友情』佐藤 朔・白井浩司訳)

だれでも、自分自身
[次のページ]
戻る   Point(7)